コラム

[2010/02/01] 第19回 「コメント力」

昨年末、最年少賞金王に輝いた男子ゴルフの石川遼が、2009年日本プロスポーツ大賞に選出された。鳩山首相が献金問題で釈明会見を開いた翌日のこと。

会見で「総理は今、ボールがハザード(危険地帯)にある状態では」との質問に、

「フェアウェーにあると思う。僕もボールを曲げて林に入ったりすると、ギャラリーのいろんな声が聞こえてくる。ゴルフは自分のボールを自分で責任を持って自分だけで打っていけるけど、総理の場合は全く違う。国民の意見もすべて聞かなくてはいけない。いろんな意見を踏まえて結論を出すというのは、なかなか難しいことだと思う。」

窮地の首相を絶妙にフォローした。18歳とは思えない堂々としたコメントである。

テレビのコメンテーターとしても有名な齋藤孝氏(明治大学教授)は、自身の著書「コメント力」で、「日本人はコメント下手の国民である。気の利いたひと言を求められても、とっさに言葉に出て来ない。」と言っている。欧米人に比べ、日本人はいつでもコメントができるような習慣がついていないからだという。

コメント下手な日本人

日本では人と違いすぎるコメントをすると、奇をてらっているというか、目立とうとしているとみなされ、あまり評価されなかった。だから黙っているほうが得、という風土が作られてしまった。その結果、知的能力に比してコメントの質が低すぎる状況を生んでしまった。

その点、欧米人は、人とは違う自分の見方を出そうとする。人と同じであることは個性がないということであり、それは恥だという価値観がある。それゆえ、コメントを求められたとき嬉々としてユニークなコメントを発することができる。

優れたコメントとは

優れたコメントとはどのようなものか、優れたコメントをするコツは何なのか。
「コメント力」の中で紹介されていたのは、以下のとおり。

・短いこと (整理された切れ味のいい発言)
・的はずれでないこと (一番重要な中心が理解できていること)
・「お得感」のあるもの (何かひとつでも新しい情報が含まれていること)
・内容が面白いこと (見る視点がいい、角度がある切り口である)
・表現が面白いこと (記の利いた言語表現である)
・要約力より立ち位置を優先すること

「要約力より立ち位置を優先する」とは、自分の立場を理解した上で発するコメントである。

例として、

長寿世界一となった泉重千代さんのコメント。

質問:「好みの女性は?」
答え:「年上の女」

好きな力士を聞かれた昭和天皇のコメント。

質問:「好きな力士は?」
答え:「職業上の秘密です」

暴走族や少年院に入った人達の本の帯に寄せたタレントのYOUさんのコメント。

「経歴に画数多すぎ」

どのコメントも、自分の立場をわきまえた上での気が利いたコメントである。

「コメント力」の鍛え方

「コメント力」を鍛えるには、日常的にコメントを出す練習をしてみることらしい。 映画を観たら1行コメントを考えてみる。「面白かった」ではなく、「この映画で人生観が変わりました」「明日から私も恋をしたくなりました」などというコメントだ。本を読んだら、ひと言、ふた言コメントをメモしておくのも有効な手だ。
人前で話すときは、話す内容を文章にした後、その文章を切り詰め、箇条書きあるいは、キーワードだけに整理していくといった作業をするのも、「コメント力」を磨くための有効な手法であるという。

名コメントを探してみた

このところ、コメント力という観点をもってテレビや世間を見るようにしている。
最近見つけた「ナイスコメント!」を一つ紹介。

デビュー20年目に突入したシンガーソングライター槇原敬之のコメント。

質問:「デビュー20年のプレゼントは何が欲しい?」
答え:「もう20年」

仕事でもプライベートでも、あらゆる場面で、即時に気の利いた「コメント力」が求められている時代になっている。まずは、「コメント帳」を持ち歩き、いいコメントを集めていこうと思う今日この頃である。 <k.g>


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