コラム

[2012/12/03] 第53回 思考を整理する

思考を整理する

コラム執筆後、毎回反省することがあります。執筆作業の最中に考えが発散したり、脱線して違う方向に進んでしまいます。挙句の果て、頭のなかが真っ白になり、自分が何を書きたいのか分からなくなってしまいます。

過去に執筆したコラムでは、「シンプルに考える」、「手段の目的化」、「答えは自分の中にある」など、自分の内面と向き合い、自身の思考・行動を見つめ直す機会を設けてきました。シンプル思考を意識してきましたが、実際は、混沌(こんとん)とした思考のなかで手詰まり状態になっていました。


悪しき思考癖

これまでの執筆作業を振り返り、自身の思考や行動の癖を考えてみると、3つの特徴に分類できます。

・複数の候補テーマから1つに絞り込むための思考の基軸を持っていない。
・コラム全体の構成を固めずに、執筆しながら結論を導こうとする。
・情報収集に歯止めをかけられず、自分に必要な情報を特定することが困難となる。

複数のテーマが候補として残ること自体は問題ではありません。全体の構成が固まっていない状況で、各テーマの執筆作業を並行して進めようとするところに無理があります。方向性や終着点が見えていなければ、必要な情報も分かるはずがないのです。

手当たり次第に情報を集め、集めた情報のなかから方向性を見いだそうとしていました。情報に固執するのは、考えを持たない自分の不安や弱さを隠す防衛手段なのです。寄せ集めの情報から偶然発見した結論、強引に導いた結論は、表面的で説得力がありません。テーマの本質にまで踏み込んでいないのだから、当然の結果です。

身の周りを整理してみたら

締め切り間際で追われるように執筆するという過去の反省から、本コラムの執筆作業は、いつもと比べて早い時期から取り掛かりました。より多く確保した時間は、テーマ内容について考える時間に充てる予定でした。しかし、その時間の大半を情報収集に費やしました。机の上は、WEB記事、新聞の切抜き、書籍、メモ等の調査資料であふれ返っていました。

身の周りの雑然さに嫌気が差し、机の上の片付けることにしました。気分転換も兼ねて徹底的にやろうと思い、次のルールを決めました。

・漠然と集めた資料は思い切って捨てる。
・調査資料から気になるフレーズを抜き出す。
・抜き出したフレーズから注目すべきフレーズを取り上げ、1枚の紙にまとめる。

不要となった調査資料は、目の届かない場所に収納するか廃棄しました。机の上には、注目すべきフレーズをまとめた1枚の紙だけを残しました。たったこれだけの片付けで、空間がすっきりするだけでなく、頭のなかがクリアになる感じがしました。

きっかけは自分の外側にある

人は、身の周りにモノがあふれ片付いていない状態を見ると、気持ちまで雑然とします。逆に整理された状態を見ると、気持ちも落ち着きます。頭のなかを整理しようとする時、真っ先に実行すべきは身の周りを整理することです。

整理収納アドバイザーによると、片付けは、「1.使っているもの、使っていないものに分ける」「2.必要なものの量を決める」「3.使う頻度でさらに分ける」「4.動線を考えてものを収納する」という順序で実行することを勧めています。

「いるもの・いらないもの」に分けるのではなく、「使っているもの・使っていないもの」に分けるという点がポイントです。このポイントは、情報を整理する際にも役に立ちます。「いま使う・使わない」という事実にだけ基づき情報を分別し、「いつか使うかもしれない」情報は捨ててしまうということです。ここで、「頭のなかが手詰まり状態になったので、まずは情報を整理しよう」と決めたとき、果たして物や空間と同じように整理できるのでしょうか。

自分の内側に解決策を見いだせないなら、外側からきっかけが得られないか考えてみます。自分を取り巻く環境の「制約条件」を確認してみるのです。自分の能力に関する制約(持ちうる知識や技術、意欲と行動のギャップ)、時間的な制約(期限、費やせる時間)、周囲が要求する制約(指示、思惑、信頼感)など、制約条件に照らし合わせて、いまの自分に何が必要なのかを考えます。制約があるからこそ、自分なりの指標や基準が見えてきます。思考を整理するには、あらかじめ制約条件を整理することが大切です。

自分の思考癖を改善したり、思考力を高めることは容易ではありません。手詰まり状態になり思考を整理するときは、自分の内側に解決策を求めるより、いまの自分をいかに自分の外側(制約条件)に合わせられるかということを考えるようにします。<k.g>


コラム一覧はこちら