コラム

[2014/04/12] 第69回 [連載]言語表現と文章能力

ことば

日本人(同じ民族)の中で、日本語(同一言語)での会話に慣れてしまうと、特別な情報を提供あるいは共有しなくても会話が成立したり、具体的な言葉を多用しなくても、伝えたいことが伝わる機会が多いと感じます。

しかし、いつものように会話をしていても、伝える相手が変わった途端に、言いたいことや気持ちが、なかなか伝わらないと感じることもあります。会話がかみ合っていないような違和感を覚えたり、会話が成立していないとさえ感じることがあります。

日本語(同一言語)で会話していても、言いたいことや気持ちが、伝わるときと伝わらないときがある。社会環境の変化などによって、従来の価値観や考え方が変化しているのではと、感じることもあります。

今回は、言語表現の変化(=進化)と、母国語(言語)を正しく扱うことの大切さについて、考えてみたいと思います。

言語表現の選択と変化(=進化)

外国語学校への通学や教材の購入など、英語などの他国語を学んだり接する機会が増えています。他国語を学ぶのならば、その国の方々の表現の方法や癖(=思想や習慣)を知ることも、大切な点ではないかと感じています。

欧米の方の会話では、まず最初に Yes か No があって、それからなぜそうなのかを説明する習慣があります。日本的な思考回路で文章を構成してしまうと、前置きが長くなり、なかなか結論には到達しません。特に欧米の方などは最初に結論を伝えると思い聞き始めては、頭の中で内容を記憶したり組み替えているうちに困惑してしまい、結局は何を言いたいのかを理解できません。

その人の生活様式や育まれた環境によっては、同じ内容を伝えようとしても、文章の構成や言語表現が異なるということです。

母国語か他国語であるかにかかわらず、言葉や言葉づかいまたは表現の方法は、その国や民族といった人々の考え方や姿勢を映し出す(映し出している)ものです。日本語の漢字から平仮名を生んだのは流行や文化であり、女子高生などが頻繁に使用するギャル語もまた、文化発信による変化(=進化)によるものです。

言葉の変遷には、そのときの環境や文化が大きくかかわっています。どのように伝えたいかといった、人の感情や気持ちあるいは考え方が、言葉や言葉づかい(=手段)を変化(=進化)させます。そのときにそのような環境が必要としたからこそ、特定の言語表現が生まれます。そして選択され続けては、それが標準へと変移します。

あくまでも言葉とは、気持ちや感情を伝えるための手段です。そして母国語である日本語もまた、単なる手段の一つです。その人の人格を形成し構成している環境の変化によって、会話における正しい(標準の)言葉や言葉づかいの解釈が、変化するということです。

会話の習慣化と文章能力

伝えたい内容は同じであっても、人それぞれの言語表現の方法があり違いもあります。しかし、正しく伝えようとするならば、伝えたいことは何かを明確にしていなければ伝わりません。同じ環境で長く過ごしていると、間違った言葉や言葉づかいでも、何となく伝わってしまいます。そのことで、自分が伝えたいことは何かを整理していなくても、会話は成立し生活できてしまいます。

会話を考えるうえでは、もし英語などの他国語を学びたいと考えるならば、まずは母国語(言語)を正しく扱えることが、大切ではないかと考えています。

会話の内容に主語がない、修飾語ばかりで述語(結論)が盛り込まれていない。あるいは、気持ちや思いなどの感情を並べ立てるだけで、どうしたいのかを説明していない。そもそも自分は、何を伝えたいのかの正しい理解と整理が、会話にとっては基本的なことであり、とても重要なことです。

頭に浮かんだ言葉をそのまま垂れ流して話したり、説明に対する説明を連鎖的に話してしまうことが、癖であり習慣化している方もいます。前置きが長くなる、さらには要点が見えなくなる原因ともなりますので、留意すべき点です。

親しい友人や気心が知れた方との会話に慣れ親しむと、伝える内容を省略したり言葉づかいが多少間違っていても、ある程度は通用してしまうことがあります。このようなことが習慣化することで、どのような言葉(単語)を組み立てて表現すればより伝わるかなどの考えが、おろそかになります。

いつ、どこで、誰が、何を、どのように、そしてなぜか。あらためて慣行の5W1Hで整理してみると、自分が伝えたい内容や表現が、いかに乏しいかと恥ずかしくなることがあります。「結論から先に言う」ことは、論理的な構成だけの問題ならば、話す順序を変えるだけで解決します。

誰に対して何を伝えたいのかなど、自分が伝えたい内容を論理的に構成できなければ、母国語か他国語であるかにかかわらず、「言葉」そのものを正しく扱えないということであり、共通の言語翻訳は難しいということです。<s.o>

§今回は言語表現と文章能力をテーマに、言語表現の変化(=進化)と母国語(言語)を正しく扱うことの大切さについて考えてみました。(次回は、2014年5月頃の掲載を予定)


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